要介護認定者数や介護サービスの利用状況を推定する方法を紹介します。
一般に高齢者(65歳以上)の人口比率が14〜21%の社会は高齢社会、21%を超えると超高齢社会と呼ばれます。
日本の人口は、急激に高齢化が進んでおり、平成27年の国勢調査結果において高齢率が23%に達し、超高齢社会となりました。
その後も高齢率は上昇し続けています。
内閣府が毎年公表している「高齢社会白書」によると、平成28年10月1日現在の65歳以上の高齢者人口は3459万人であり、総人口に占める割合(高齢化率)は27.3%となっています。 また、白書では将来推計もしており、高齢化率は2025年に30%に達した後、2050年辺りまで大きく上昇して37.7%となり、その後も緩やかに上昇が続く事が推計されています。
それに伴い、平成27年には、現役世代(15〜64歳)2.3人に対し高齢者1人であった割合が、2050年には、現役世代1.4人に対し高齢者1人という比率になり、必要な社会保障費の増加と共に、老々介護の発生など介護に係る問題が深刻化していくことが想定されます。
推計要介護認定者数
はじめに介護保険制度について少し説明します。
介護保険の被保険者は「第1号被保険者」と「第2号被保険者」にわけられ、65歳以上は「第1号被保険者」は、40〜65未満の人は「第2号被保険者」と分類されます。なお、介護保険は40歳以上が対象です。
介護保険の給付基準は、「第1号被保険者」は「要介護認定」を受ける事、「第2号被保険者」の場合は、原因が老化に起因する特定の要因で「要介護認定」を受ける事で給付されることとなっていますが、「第2号被保険者」の割合は少なく要介護認定者数の約3%程度となっています。
要介護認定者数を推計する 厚生労働省が毎年公表している「介護保険事業状況報告」では、市町村毎に要介護認定者数が掲載されています。 この結果と国勢調査の結果をもとに、要介護認定者数を推計する事ができます。
まず「介護保険事業状況報告」を利用して、第1号被保険者に占める要介護認定者の割合を算出いたします。
要介護認定者 + 第1号被保険者数 = [A]
先程説明しましたように、第1号被保険者とは介護保険制度においては65歳以上の人を指します。
国勢調査では町丁毎に65歳以上の人口が出ていますので、この65歳以上の人口を算出した計算式で按分することで、要介護認定者数を推計し、町丁毎の分布を把握することができるという仕組みです。
町丁毎の要介護認定者 = [A] × 町丁毎の65歳以上の人口
計算を元に推計した町丁毎の要介護認定者数を、各町丁の面積で割って人口密度を算出した結果がこちらです。
認定者数が多い地区と少ない地区の傾向が「見える化」できました。なお、例として示したのは札幌市北西部ですが、町丁の区割りがものすごく整然としていてキレイです。
参考のため、総人口の人口密度を示します。
似たような傾向となっており、総人口が多いところは要介護認定者も多い傾向になっていますが分布の違いは確認することをできます。
ただし、市の中心部から離れた地区(特に下の図の青色の円で囲った地区)では総人口密度は比較的少なく色が薄くなっていますが、要介護認定者数では色が濃くなっています。
要介護認定者数を推計する 「介護保険事業状況報告」では、介護サービスに使用された保険給付額等の調査結果も含まれています。 例として、「居宅介護サービス」の利用に係る介護保険の給付額を町丁毎に示して見ました。
ここでは、推定した町丁ごとの給付額を各町丁の人口で割って、人口一人当たりの給付額を示しています。
市の中心部から離れた地区で多くなっている傾向が、要介護認定者数の地図よりも明確に確認できました。
交通が中心部よりも不便な地区に生活している方は、居宅サービスを多く利用しているのでしょうか。
なお、この報告書では、「要介護1」、「要支援1」等の要介護度毎の人数も示されているため、必要に応じて、更に詳細なデータを確認することが可能です。
使用したデータ
・国勢調査「年齢(5歳階級、4区分)別、男女別人口」
・平成27年度介護保険事業状況報告(年報)
・OpenStreetMap