顧客浸透率とは、想定顧客のうちどれだけの顧客を獲得できているかを示す数値です。 一般的にシェアともいわれます。
ターゲット層の人口や世帯数の総数に対して、獲得した顧客の割合を計算して算出します。
エリアマーケティングでは、会員登録やアンケートで入手した顧客数を、ターゲット人口等で割って顧客浸透率を算出します。
顧客浸透率を調べることで、商圏内で多くの顧客を獲得できている強い商圏と、あまり獲得できていない弱い商圏を把握できます。
商圏の強さに応じて戦略を変えることで効率的な販促活動を行えます。
顧客浸透率とは?
「シェア」という言葉は成功した家電製品を表す場合などによく使われます。
例えば「パナソニックはヘアドライヤーのシェアを2割獲得」などですね。
この場合は、ヘアドライヤーの総販売額や総販売台数のうち、パナソニックのヘアドライヤーの売上額や台数がどれだけの割合であるかを示しています。
これは「シェア」の中でも「市場シェア」と呼ばれます。
市場シェア=あるメーカーの販売額(台数)/業界全体の総販売額(台数)
エリアマーケティングにおいては、総販売額や総販売台数の代わりに特定地域のターゲットの総数(人口や世帯数等)を用いて算出します。
そして、顧客浸透率と呼ぶのが一般的です。
顧客浸透率=顧客獲得数/ある地域のターゲットの総数
顧客浸透率は、全国規模のチェーン店だけでなく、もっと小規模な飲食店や小売店においても販促活動に活用することができます。
今回は、ある小規模な飲食店を例として、店舗の顧客浸透率を調べてみましょう。
顧客の分布を把握する
この飲食店は、40代後半から60代前半の女性を顧客ターゲットとして高級感があり落ち着きのある店舗づくりをしています。
会員登録や定期的に実施しているアンケートで来店者の住所を入手しています。
顧客浸透率を調べる最初の手順は、顧客住所を地図上に示していくことです。
入手した来店者の住所の位置に地図上で印をつけていきます。
点が分布している範囲は、実際に来店されたお客様が生活している範囲でこの飲食店の商圏です。
これだけでも、来店者の傾向がわかります。
この例では、店舗の西側には広く来店者が分布しているのに対し、東側、特に北東部は少ない傾向です。
店舗の南東から北側に向かった幹線道路が通っており、この方向からの来店が難しい状況が想定されます。
ターゲット総数を調べる
来店者の分布を把握できたら2つ目の手順です。ターゲットの総数を調べます。
この飲食店のターゲット層は、40代後半〜60代前半の女性です。
国勢調査では、小地域ごとに5歳区切りで男女別の人口が調査されており、誰でも入手できるデータとして公開されています。
この結果をもとに、飲食店周辺の小地域についてターゲット層の人口を計算していきます。
飲食店の北側と西側にターゲット層が多く生活している小地域が確認できました。
このターゲット層のうち、この飲食店はどの程度顧客を獲得できているのでしょうか。
顧客浸透率を算出する
最古の手順は、冒頭に示した以下の計算式で小地域ごとに顧客浸透率を算出します。
顧客浸透率=顧客獲得数/ある地域のターゲットの総数
「顧客獲得数」は、先程作成した来店者の分布図をもとに、小地域ごとに来店者数を数えます。
「ある地域のターゲットの総数」は、国勢調査をもとに調べた小地域ごとの40代後半〜60代前半の女性人口です。
結果を%で示してわかりやすくするため、計算結果に100をかけます。
来店者の分布図に算出した顧客浸透率を示しました。
小地域ごとに顧客浸透率に応じて色をつけています。
飲食店周辺と西側の小地域が顧客浸透率5%を超えていることがわかりました。
北東部の幹線道路の向こう側の顧客浸透率は低くなっていますね。
顧客浸透率が高い小地域に隣接しているにもかかわらず、低い数値となっている小地域もいくつか確認できます。
強い商圏と弱い商圏
このようにして算出した顧客浸透率は商圏内の顧客獲得数のバラツキを明らかにします。
顧客を多く獲得できている「強い商圏」、それほど獲得できていない「弱い商圏」が存在していることがわかるんです。
このバラツキを効率的な販促活動に活用することができます。
例えば、強い商圏では「リピーターの獲得や口コミによるさらなる広がりを狙う」。
弱い商圏では阻害要因が無いかを分析した上で「新規顧客獲得を狙う」など、商圏の強さに応じて販促の方針を変えることが可能になります。
また、「チラシ集中配布の戦略」といって、チラシ配布などの販促を行う場合には強い商圏に集中的に実施するのが鉄則です。
この戦略を実践する上でも、顧客浸透率は非常に重要なものとなっています。
商圏の強さを考慮したチラシの配布戦略についてはチラシは配布する地区の優先順位を決めて集中的に撒きましょう。チラシの反響をあげるための考え方で詳しく説明していますので参照していただければと思います。
商圏内の強弱を見定めて販促を行うことで効果が上がります。
強い商圏に集中的に販促を実施して顧客浸透率を高めた上で、次の戦略として弱い商圏に販促を行い顧客浸透率を高めて行くのが大切です。
使用したデータ
- 国勢調査「年齢(5歳階級、4区分)別、男女別人口」
- OpenStreetMap