高額商品の販促をする場合、年収が多い世帯をターゲット層として設定します。ターゲット層が多い地区を把握できると、その地区に重点的に販促を仕掛けることで成功率が高くなる可能性があります。

残念ながら公開されている統計調査で、町丁毎の推定年収が調べられているものはありません。
しかし、複数の調査結果を元に町丁毎の世帯年収を推定することが可能です。

今回は、公開されている統計調査結果を利用して町丁毎の世帯年収を推定する方法を紹介します。 

推定世帯年収

推定は「住宅・土地統計調査」と「国勢調査(住宅の所有の関係別世帯数)」の2つの調査結果を使用して行います。

「住宅・土地統計調査」とは、総務省が全国の住宅とそこに居住する世帯を対象に5年に1回実施している調査で、居住の状況や住居の形態、世帯の年収等が調査結果として取りまとめられています。
調査目的は以下の通りとされています。

我が国の住宅とそこに居住する世帯の居住状況、世帯の保有する土地等の実態を把握し、その現状と推移を明らかにする調査です。

https://www.stat.go.jp/data/jyutaku/index.html

この調査では、調査項目として住宅の所有形態や年収階級ごとの世帯数が含まれており、市区町村ごとに調査結果が公開されています。

具体的には、“北九州市小倉北区の総世帯数は●●世帯、そのうち持ち家世帯は○○世帯。持ち家世帯のうち、世帯年収300〜400万円の世帯は△△世帯”という情報がまとめられています。

世帯年収を推計する最初のステップでは、「住宅・土地統計調査」結果をもとに、世帯の持ち家率と世帯年収階級の関係式を算出します。

例として、ある市区町村における「持ち家率」と「世帯年収階級」をプロットしたものが下のグラフです。  

持ち家率と世帯年収の間には強い関係
持ち家率と世帯年収の関係

横軸に持ち家率、縦軸に世帯年収階級をプロットしました。

持ち家率と世帯年収の間には強い関係があることがわかります。推定したい地区が属する市区町村の結果を使用して、その市区町村における2つの数値の関係式を計算し推計に使用します。

続いて使用する「国勢調査(住宅の所有の関係別世帯数)」では、町丁ごとに住宅の所有形態別の世帯数が調査されています。  所有形態として、借家や持ち家に分類され、分類ごとの世帯数が確認できます。

下の図は、持ち家世帯数に応じて町丁毎に色分けした地図です。

町丁字毎の持ち家位世帯数
持ち家世帯数

持ち家世帯が多い町丁ほど濃い緑色で表示しています。

この世帯数を総世帯数で割ることで、町丁字毎の持ち家率を算出することができます。

算出した持ち家を、先程作成した「持ち家率と世帯年収の関係式」に当てはめると世帯年収を推定することができます。

持ち家率と世帯年収の関係式より、町丁ごとの世帯推定年収を算出し以下のように地図上に示しました。

町丁字ごとの世帯推定年収

また、次に示すのは総世帯数に占める推定年収1500万円以上の持ち家世帯数の割合です。

推定年収1500万円以上の持ち家世帯数の割合

この推定データを活用することで、収入が多く裕福な世帯が多い地域の傾向を把握することができます。

ただし始めに紹介したとおり持ち家率をもとにした集計方法であるため、たとえば山間部の村集落など基本的に持ち家である地区では、世帯収入が高く推定される傾向にあります。
そのため、推計データをもとに地域の傾向を把握した後に、航空写真など他の情報も一緒に使用して、地域の特性を判断するほうが良いでしょう。

 使用したデータ

国勢調査「住宅の種類・所有の関係別一般世帯数」
平成25年住宅・土地統計調査
・OpenStreetMap