総務省が実施している「家計調査」は、世帯の家計の収入・支出、貯蓄・負債などについての調査です。
調査は毎月行われ、調査対象世帯は一定期間ごとに交代します。

地域ごとに支出額の傾向がわかる調査になっており、調査結果はメディアでもよく使用されます。
例えば「日本で餃子を一番食べる都市は宇都宮市!」のような記事の出典として使用されているのがこの家計調査です。

家計の収支を把握することが目的となっているため、食品の支出額だけではなく、家電製品の支出額や住宅の所有の関係、貯蓄・負債の保有状況、住宅などの土地建物の購入計画についても調査項目となっています。

参考: 家計調査 家計調査の概要(総務省)

集計結果は「家計収支編」、「貯蓄・負債編」、「家計消費指数編」に分けて公開されており、今回紹介する「家計収支編」では世帯の支出金額が用途や品目別に集計されています。

注意点は、全市町村で調査がされているわけではないことです。
調査されているのは、都道府県庁所在地と政令指定都市、それ以外に統計的に抽出された市町村の合計168市町村です。

都道府県単位の集計結果も公表されていませんが、都道府県庁所在地のデータをその都道府県のサンプルデータとして扱うことで都道府県ごとの傾向を知ることができます。

家計調査結果から「都市階級・地方・都道府県庁所在市別 総世帯(2020年)」という集計結果をGISを使用して地図上に表示していみます。

マッピング例

例として、パンと米の支出額で都道府県を色分けして支出の大小を地図上で確認してみます。

data210806 01 パン min
パンの1世帯当たり年間の支出金額

まず、パンの支出額です。
色が黒っぽい都道府県ほど支出額が少なく、明るい色の都道府県ほど支出額が多いです。

北海道と東北地方の道県で黒っぽい色となっており、パンの支出額が少ないことがわかります。
南下していくとだんだん明るい色が増えていき、関西地方では明るい色の府県が目立ちます。
さらに南下して九州、沖縄地方に達するとまた黒っぽい色が増えていき、パンの支出額が少なくなっていくことがわかります。

中部地方の山梨県や四国地方の愛媛県など周囲と色が異なる県もありますが、全体的に北と南ほどパンの支出額が少ない傾向です。

data210806 02 米 min
米の1世帯当たり年間の支出金額

続いて、米の支出額を見てみます。

パンと比べると全体的に大きな色の変化はありません。
福井県や北海道、山形県、長崎県などが明るい色で表示されています。
一方、東北地方から関東地方にかけての太平洋側や中国地方で特に黒っぽい色が目立ちます。

data210806 03 米とパンの割合 min
パンと米の割合。赤色が濃いほどパンの支出が多く青色が濃いほど米の支出が多い

最後に、パンと米の支出額の割合を計算して地図上で確認してみます。

都道府県ごとに、パンと米の支出額を合計しそれに占める米の支出額の割合を計算しました。
米の割合が大きい都道府県ほど青系統の濃い色で表示されるようにしました。
赤系統の濃い色になるほど、反対にパンの割合が大きくなります。

関西地方や関東地方を中心に赤系統の色が濃い都府県が目立ち、パンの割合が大きいことがわかります。
北と南のほうでは青系統の色が濃い道県が目立ち、米の割合が大きいことがわかります。

パンの支出の割合が最も大きいのは香川県、続いて愛媛県、岡山県となっています。
米の支出の割合が最も大きいのは山形県、続いて沖縄県、北海道となっています。

今回は、米とパンのみを扱いましたが、地域で好みに違いがでる食品は他にも多くあります。
「家計調査」結果を使って地域の食の好みを地図上で確認するでは、特徴的な地域特性がみられるいろいろな食品に地図上に表示してみました。ぜひ、こちらもご覧ください。

調査事項

調査結果は全国単位や都道府県庁所在地単位で集計されExcelファイルで公開されています。
世帯の支出金額については、食料、住居、光熱費、家具、衣料、保険、交通費、教育、娯楽などについて数百項目の細かい分類ごとに集計された結果が公開されています。

出典

  • データ名:「<品目分類>1世帯当たり年間の品目別支出金額 総世帯 2020年」
  • 調査名:「家計調査」
  • 作成元:総務省総務局
  • 更新頻度:毎月
  • 主な入手先:e-stat「統計で見る日本 家計調査」