簡単に標高や傾斜を知ることができるデータを紹介します。

標高が記録されたオープンデータとして有名なものに基盤地図情報の数値標高モデル(DEM)があります。
基盤地図情報の数値標高モデルは、最小5メートルメッシュの高精度のデータを得られることや、随時情報が追加・更新されていることなどから一般的に利用できる標高データとしては最も有用なものになります。

基盤地基盤地図情報の数値標高モデルの紹介記事は基盤地図情報(数値標高モデル)で陰影起伏図を作成しQGISで表示する方法を画像で解説で紹介しています。

opendata hyoukou 00 数値標高モデル min
基盤地図情報の数値標高モデルを使用して作成した陰影起伏図

しかし、基盤地図情報の数値標高モデルはそのままではGISで読み込めないため、ダウンロードしたファイルを専用のツールを使用して変換する必要があります。
さらにラスタデータであるため、加工作業がやりづらく利用目的によっては扱いづらく感じられます。

今回紹介するデータはこの基盤地図情報の数値標高モデルをもとに作成されたベクターデータで、国土数値情報ダウンロードサービスで公開されています。
GISで読み込めるファイル形式でダウンロードできるのですぐに利用することが可能です。

国土数値情報の「標高・傾斜度」というデータの紹介になります。

データの説明

国土数値情報の標高・傾斜度メッシュデータのメッシュサイズは、以下の3種類から選択することができます。

  • 3次メッシュ(1kmメッシュ)
  • 4次メッシュ(500mメッシュ)
  • 5次メッシュ(250mメッシュ)

全てシェイプファイル形式で作成されているので、そのままGISソフトに読み込むことが可能です。

より小さいサイズの基盤地図情報数値標高モデルデータを使用して、メッシュごとに平均標高や最大標高、最小標高などを算出しています。
3次メッシュと4次メッシュは、基盤地図情報数値標高モデルの250mメッシュのデータから平均値や最大最小値を算出しています。
5次メッシュは基盤地図情報数値標高モデルの10mメッシュのデータから算出しています。

出典として採用されている基盤地図情報のデータ基準年は「平成21(2009)年5月1日時点」と古くなっています。
データが古いため、最新の情報やデータの精度が求められる場合には適していない場合がありますが、大きく変動するものではないので多くの場合はあまり問題にならないのではないでしょうか。

データのダウンロードは都道府県単位ではなく「メッシュ番号」で場所を指定する必要があります。
そのためダウンロードしたい地域のメッシュ番号を確認しなければなりません。
メッシュ番号の位置を知りたい場合は地域メッシュ – MULTISOUPが便利です。

マッピング例

千葉県の房総半島南部付近を例として使用します。

opendata hyoukou 01 標高(千葉県南部)3次メッシュ min
3次メッシュを平均標高に応じて色分けした

この図面は3次メッシュのデータを使用して平均標高に応じてメッシュの色を変更しました。
赤系統の色が濃いメッシュほど標高が高いメッシュです。

3次メッシュは約1km四方と大きめですが房総半島の標高の特徴を知ることができます。
中央付近に赤いメッシュが集中している様子がわかります。
これは房総半島の南部から中部にかけて広がる標高300メートル前後の丘陵地や台地で、房総丘陵と命名されています。

opendata hyoukou 02 標高(千葉県南部)4次メッシュ min
4次メッシュを平均標高に応じて色分けした

これは4次メッシュのデータを使用した図面です。
同様に平均標高で色分けしています。
4次メッシュは約500m四方のサイズで、3次メッシュより4倍高い精度になります。
房総半島南部の南房総市などでは標高が高いところから低いところに向けて通る谷筋の形状を確認することができます。

また、鴨川市の中央部では房総丘陵に食い込むような形状で低地が広がっています。
これは富津市と鋸南町の境界にある鋸山から鴨川市にかけて通っている地溝帯の一部です。
地溝とは、ほぼ平行に位置する断層によって区切られた谷上の地形のことで、この地溝帯の谷形状が鴨川市にある青系統のメッシュとして表示されています。

opendata hyoukou 03 標高(千葉県南部)5次メッシュ min
5次メッシュを平均標高に応じて色分けし

5次メッシュを使用した図面です。
5次メッシュは約250m四方のサイズで、4次メッシュより4倍、3次メッシュより16倍高い精度になります。

房総丘陵の尾根や谷筋の形状や位置関係がよりよくわかります。
特に丘陵の北側斜面に多くの尾根や谷筋がみられます。

丘陵の北東部にある大多喜町は赤いメッシュの範囲が広くなっており、長い谷筋を確認できます。
養老渓谷という千葉県随一の渓谷は、この谷筋の中に存在します。

最後に5次メッシュのデータを使用して標高ではなく傾斜を表示してみます。

opendata hyoukou 04 傾斜(千葉県南部)5次メッシュ min
5次メッシュを平均傾斜に応じて色分けした

赤系統の色が濃いメッシュほど平均傾斜が急なメッシュです。

標高が高い地域では傾斜も急になりそうですが、標高の図面とはかなり見た目が異なります。
例えば、上でも紹介した大多喜町では町域の南西部に標高が高い地域が広がっていましたが、傾斜が急なメッシュは少なくなっており、広い範囲にわたって緩やかに高度が上昇していることがわかります。

一方、傾斜が急なメッシュは鴨川市や富津町、鋸南町に多いです。
富津市と鋸南町の境界にある鋸山から鴨川市にかけて通っている地溝帯の周辺で傾斜が急であることがわかります。

属性情報

メッシュごとに標高と傾斜角度、傾斜方向が記録されています。
標高と傾斜は平均、最大(高)、最低(小)のそれぞれの数値を確認できます。
属性情報は以下の通りです。

  • 平均標高
  • 最高標高
  • 最低標高
  • 最大傾斜角度
  • 最大傾斜方向
  • 最小傾斜角度
  • 最小傾斜方向
  • 平均傾斜角度

出典

使用したデータ