障害者総合支援法では、障害者の「介護の支援を目的とするサービス」として居宅介護や共同生活介護等の支援、「訓練等の支援を目的とするサービス」として就労継続支援、自立訓練といった支援等、多種の支援が設けられています。

障害者福祉施設を開業する場合、入居型支援等、生活の拠点を移すタイプの支援であれば、施設の周辺環境等が重要な要素となるかもしれません。
しかし、小規模事業者や個人が開業する場合、利用者が通所するタイプの施設が多いです。このようなタイプの支援であれば、対象となる障害者の方が周辺に生活していないエリアで事業を開始しても継続していくことは難しいでしょう。

利用者が通所しやすいアクセス良好であることの他に、施設利用者となる可能性がある方が周辺に多く生活していることが大切です。

障害者総合支援法の概要

障害者総合支援法は平成24年(2012年)に、障害者自立支援法が改正され創設された法律です。その趣旨は以下のように説明されています。

「障がい者制度改革推進本部等における検討を踏まえて、地域社会における共生の実現に向けて、
障害福祉サービスの充実等障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するため、新たな障害保健福祉施策を講ずる」こと

障害福祉サービスの利用について (全国社会福祉協議会,2018年4月)

障害者の自立支援を目指した法律であった障害者自立支援法から、障害を持つ方も個人としてふさわしい日常生活又は社会生活を営むことができるよう総合的に支援を行うことを目的とした法律に変わりました。支援対象である「障害者」の定義が見直されて拡大したり、障害種別にかかわらず福祉サービスが一元化されたり、障害者がもっと「働ける社会」を目指した法律となっています。

この法律のもとでは、障害福祉サービスによる支援に加えて地域生活支援事業その他の必要な支援を総合的に行うこととなります。

発足時に、3年後に見直しを行うことが決められており、見直し作業が行われた結果、平成30年(2018年)に改正法が施行されました。
改正後の障害者総合支援法では障害のある人からの要望等を踏まえて、支援が追加されたり、支援内容の変更が行われています。

障害者福祉施設の開業の際に重要なこと

現行の障害者総合支援法では、障害者の「介護の支援を目的とするサービス」として居宅介護や共同生活介護等の支援、
「訓練等の支援を目的とするサービス」として就労継続支援、自立訓練といった支援等、多種の支援が設けられています。

障害者福祉事業を営む方は、大きな資本を持つ大企業から、個人レベルの事業者まで自身の規模にあった支援事業を運営していくこととなります。
事業を計画するにあたり、最初に検討しなければならないことの一つが開業場所です。

入居型支援等、生活の拠点を移すタイプの支援であれば、施設の周辺環境等が重要な要素となるかもしれません。
しかし、利用者が通所するタイプの支援であれば、対象となる障害者の方が周辺に生活していないエリアで事業を開始しても継続していくことは難しいでしょう。

障害者福祉施設の開業には、個人で起業する方法や、フランチャイズの形態で施設のオーナーとして関わる方法等があります。

どちらの場合でも、開業場所の立地選定は施設を順調に運営していくための最重要事項です。
利用者が通所しやすいアクセス良好な場所であることの他に、施設利用者となる可能性がある方が周辺に多く生活していることが大切です。

今回の記事では公開されている国の統計調査結果を用いて、地域の障害者人口を推計する方法を紹介します。

障害者数推計の考え方

今回推計する対象は、知的障害者、身体障害者、精神障害者の3障害者の小地域ごとの人口です。
障害者総合支援法の対象には発達障害者も含まれていますが、発達障害者の推計方法も今後紹介します。

推計に使う統計調査や推計方法は3障害で異なります。
以下に障害ごとに推計の考え方を説明します。

知的障害者数の推計に利用する統計調査の解説

知的障害者の推計に利用する統計調査は、厚生労働省が実施している「生活のしづらさなどに関する調査」)です。
この調査は、在宅の障害者等の生活実態とニーズを把握することを目的としています。障害者手帳所持者数や障害者の基礎的な生活実態等の状況などについて調査されています。

この調査結果に掲載されている「療育手帳所持者数」を知的障害者の人口として推計に使用します。
「療育手帳所持者数」は、日本全国の年齢別人数と男女比率が示されていますので、これ元に総人口に対する知的障害者の比率を計算し、小地域ごと人口推計に利用します。

身体障害者数の推計に利用する統計調査の解説

身体障害者の推計に利用する統計調査も、厚生労働省が実施している「生活のしづらさなどに関する調査」です。
調査結果が掲載されている「身体障害者手帳所持者数」を身体障害者の人口として推計に使用します。
「身体障害者手帳所持者数」は、日本全国の年齢別人数と、男女比率が示されていますので、これ元に総人口に対する知的障害者の比率を計算し、小地域ごと人口推計に利用します。

精神障害者数の推計に利用する統計調査の解説

精神障害者の場合も「生活のしづらさなどに関する調査」で推計できるのですが、同じく厚生労働省が実施している「患者調査」の結果を利用してもっと詳細な推計が可能です。
この調査では、347区分の傷病区分別に総患者数や、外来者数、入退院者数等の都道府県別、年齢別、男女別の人数として統計結果が公開されています。

精神障害者の定義は、「患者調査」結果のうち「V 精神及び行動の障害」から「知的障害(精神遅滞)」を除いた数に、「てんかん」と「アルツハイマー」の数を加えた患者数に対応します。
患者調査は、都道府県別の調査結果が公開されているので、地域の偏りを考慮して総人口に対する精神障害者比率を算出することができ、小地域毎の人数の推計精度も高くなります。

なお、このような考え方は厚生労働省の「障害者白書」(平成30年障害者白書 参考資料 障害者の状況)で説明されています。

障害者数推計の方法

それでは、上で説明した考え方に沿って、実際に小地域ごとの障害者数を推計する方法を紹介します。

知的障害者数を推計する具体的な手順

「平成28年生活のしづらさなどに関する調査」では、以下のように年齢別男女別の知的障害者数が掲載されています。

「平成28年生活のしづらさなどに関する調査 (全国在宅障害児・者等実態調査)結果p.3より抜粋」
「平成28年生活のしづらさなどに関する調査 (全国在宅障害児・者等実態調査)結果p.4より抜粋」

日本の総人口は国勢調査結果で確認できますので、年齢別男女別に総人口に対する知的障害者の比率を計算します。
その結果は以下の通りです。

知的障害者比率
知的障害者比率

この結果を元に開業候補地の周辺の障害者数を推計することを仮定します。
開業候補地周辺の年齢別男女別人口は国勢調査結果で小地域ごとに確認することができます。
確認した小地域毎の各層の人口に、該当する知的障害者の比率をかけていきます。その結果、小地域ごとに知的障害者人口を推計することができました。

知的障害者人口密度

身体障害者数を推計する具体的な手順

身体障害者の推計方法も、知的障害者とほぼ同様です。
「生活のしづらさなどに関する調査」と国勢調査結果を元に、年齢別男女別に総人口に対する身体障害者の比率を計算していきます。

身体障害者比率

そして、開業候補地周辺の小地域の各層の人口に該当する比率をかけていきます。

身体障害者人口密度

精神障害者数を推計する具体的な手順

精神障害者の場合は、上で説明した精神障害者の定義に該当する人口の比率を算出します。
これまでの2つの障害者と異なる点は、都道府県ごとの統計結果が公表されているため、より地域の特性を踏まえた推計が可能になることです。

開業候補地が属する都道府県の統計結果と、国勢調査の結果より総人口に対する精神障害者の比率を算出します。

精神障害者比率

そして、開業候補地周辺の小地域の各層の人口に該当する比率をかけていきます。

まとめ

小地域ごとの知的障害者、身体障害者、精神障害者の人口を推計する方法を紹介いたしました。

GiSを使用して分析を行うとより簡単に、開業候補地周辺の障害者数を推計し、地図上で傾向を確認することができます。
候補地のアクセスや費用等の要素の他にも、周辺の障害者数を開業場所選びの視点に加える事で、多くの障害者様に利用しやすい福祉サービスを開業する手助けとなるでしょう。

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