障害者福祉施設を開業したいと考えている方の役に立つGISの活用情報です。
開業を考えている地域の既存施設の情報を収集し、競合状況を分析する方法の紹介です。
競合する施設の分布と、推計した障害者数を地図上で重ね合わせ視覚化。
さらに、施設の定員情報も考慮して競合施設の充足値を計算します。
障害者福祉施設を開業する際の2つの懸念事項
- 利用者が多い地域なのか。
- 競合施設が多い地域なのか。
開業する場所の立地を選定する際の大きな懸念事項の2つです。
このような懸念事項は、公開されている情報と、GISを使用して解決することができます。
開業する場所は施設を利用していただける可能性がある障害者の方が多い地区のほうが運営をしやすいはずです。
しかし、障害者が多い地区であっても競合となる施設が多く集まるところでは困難な経営状態になること考えられます。
開設を考えている地域にどれくらい競合がいるのかは、事前に把握しておきたい情報です。
競合施設の分布を地図上に視覚化してみると、既存の競合施設がどの程度存在しているのかをひと目で把握できます。
さらに、競合施設の分布だけでなく施設の定員も考慮すると、より実際の競合具合を把握できます。
その地域に生活している障害者の数に対して、競合となる施設の定員がどれくらい充足しているんでしょうか。
この充足の程度がわかれば、競合施設がどの程度開設されている地域なのかを判断する基準として有効に活用することができます。
障害者数を推計する方法
地域の障害者数は公開されている厚生労働省の調査結果を利用して行います。
詳細は以前の記事で紹介いたしましたので簡単に紹介いたします。
(関連記事)地域の障害者数を推計する。障害者施設開業に必要な視点
知的障害者と身体障害者の人口は「生活のしづらさなどに関する調査」の結果を利用します。
在宅の障害者等の生活実態とニーズを把握することを目的としたこの調査では、障害者手帳所持者数や障害者の基礎的な生活実態等の状況などについても調査されています。
精神障害者の場合は、同じく厚生労働省が実施している「患者調査」の結果を利用してもっと詳細な推計が可能です。
競合施設の情報を調べる方法
障害者福祉施設の情報は例えばWAM NETというサイトを参考にして収集できます。
WAM NETとは、独立行政法人福祉医療機構が運営しているサイトで福祉保健医療関連の情報を総合的に提供するサイトです。
福祉サービスを利用したい方向けに、制度の説明や行政情報、障害福祉サービス事業者情報などがまとめられています。
障害福祉サービス事業者情報として全国の福祉施設の情報を検索することができます。
福祉施設の情報として、住所や電話番号などの基本情報に加えて、提供しているサービスの詳細な内容が整理されています。
競合施設の分布状況を把握する
収集した障害者福祉施設の住所は、GISを使用して地図上に表示します。
今回は、例として熊本市のある地点から半径3kmの範囲に含まれる小地域の施設情報を収集して地図上に表示しました。
収集したサービスの種類は、
・就労移行支援施設
・就労継続支援 A型施設
・就労継続支援 B型施設
の3つです。
サービスの種類ごとに表示方法を変更することで、情報がわかりやすくなります。
施設定員の充足率を計算する
各施設の定員情報も収集することで、競合具合をより把握できます。
充足率は以下のように定義します。
充足率=ある地域の障害者数/ある地域の関連施設の定員
今回の調査範囲にある既存の関連施設 (就労移行支援、就労継続支援 A型、就労移行支援 B型)は計33施設、定員の合計は330人となっています。
これに対し、調査地域における一般年齢層 (20〜64歳)の3障害者(身体、知的、精神 )人口は、計4,202人と推定され、充足値は 7.85%となります。
障害者数と関連施設の分布を確認し、空白地区を見つける
人口分布図上に施設の位置を示して人口の多い地区周辺の競合施設の有無を視覚化し、それと上記の充足値を勘案して、成功のポテンシャルを考察します。
この地区の場合、地区全体の充足率が低く、調査地域北部の障害者数が多い地区において既存の就労継続支援A型施設がほとんど存在していないことから、 就労継続支援A型の成功ポテンシャルが高い地域であると推定されます。
使用したデータ
- 平成28年生活のしづらさなどに関する調査(厚生労働省,全国在宅障害児・者等実態調査)
- 患者調査(厚生労働省)
- 国勢調査「年齢(5歳階級、4区分)別、男女別人口」
- OpenStreetMap